2011年04月15日

震災 心のケア6 「自分を癒す時間を持つ・2」

続きです。

私はたままた震災の前に、「描く感覚」を取り戻しつつありました。
きっかけは、「描きたい」と心から思えるものが見つかったからです。

それは、「スケート選手の演技する姿」でした。

去年の2月、バンクーバーで行われた冬季オリンピックをテレビで何気なく見ていました。
その時の私は、三重県で手術を終え、自宅に戻ったものの、体力が戻らず、少し動いては横になって休まなければいけない状態でした。

横になって、情けない、心もとない気持ちで、することもなくテレビを点けると、その中で、いろいろな衣装をきたフィギュアスケートの選手達が演技をしていました。

綺麗な衣装を着て滑る、というのは、見た目には優雅で美しいスポーツだと思いますが、それは同時に、過酷な練習と精神の鍛錬の末に初めてその美しさを醸しだすことのできる、厳しいものであると思います。それだけに、選手、コーチ、振付師といったチームが産み出した演技は素晴らしく、人間の体と、スケート独特の動きから生まれる美しさに、自然に涙が出てくるほどでした。

その体験をしてから、フィギュアスケートの選手を描く、と思い至るまでに時間はかかりましたが、ともかく、久しぶりに描きたい対象を見つけた私は、まずは、線を描くところから、そして、徐々に人物のデッサンを繰り返し「らくがき帳」へと描く日々が始まったのです。

とはいえ、普段は仕事をしていますので、それは一日の終わりのほんの短い時間をとっての、小さな趣味でした。

でも、震災後のわりと早い時期、図らずも私には「時間」ができたのです。

初めは、その時間を仕事に当てようと思いました。私の仕事は、直接カウンセリングをすることだけでなく、資料を読んだり、書いたり、いくらでもすることがあります。
でも、少し思い直して、前回書いたように、「自分自身の心を落ち着かせること」も仕事だと思い、多少の後ろめたさと葛藤を持ちながら、約1週間は、用事以外は絵を描いていました。





鉛筆でのデッサンが形になってきた後は、色を塗る作業に移りました。
試行錯誤して、手描きの絵をスキャンして、パソコンで色付けをしていきます。

本当は、色も自分の手で塗るほうがいいのかもしれません。

でも、とりあえず今はその方法を選びました。

選んだのは、青い衣装を着ている選手の絵です。

今自分が欲している色は、「青」だと感じました。

そして、背景は「空」にしました。

毎日1枚のペースで仕上げていくうちに、自分の中に、ひとつの物語が生まれました。
青い衣装を着けて踊るスケーターの背景の空は、月夜から満点の星空へ、そして、時には虹がかかり、朝焼けの風景へと変わっていきました。

特に考えていたわけではありませんが、ライフラインが落ち着き、仕事も少しずつ戻ってきた頃、私は、絵を描くことに区切りをつけることにしました。
最後の一枚は、「朝日を浴びるスケーター」の絵となりました。

deepg4.JPG





自分のことを長々語るのは心苦しくもありましたが、お伝えしたかったことのひとつは、まず、「色」が感情を癒すことがある、という点です。

今回、私を癒してくれたのは、濃紺のようなはっきりした青色でした。

絵はしばらくご無沙汰していましたが、カラーセラピーをしているおかげで、「色で癒す」ということが、自分には抵抗なく入ってきたのだと思います。

色の意味についてですが、色彩心理学や各種のカラーセラピーで、この色にはこのような意味がある、とか、こういう時はこの色が助けになってくれる、などの理論があります。
実際の研究結果に基づくものであったり、古代から人間が自然に取り入れてきたものであったりします。

でも、もうひとつ、色には「個人的な意味」があります。

小さい頃に、いつも傍らにあったタオルケットの色が懐かしく特別な色である場合もあるでしょう。

なぜか、この色が落ち着く、というものがあるでしょう。

ある時期は、やたらとこの色の服ばかり着ていた、ということもあるかもしれません。


色の解説はできなくもないですが、今は、自分が手に取りたいと感じる色を手に取るだけでよいと思います。もちろん、興味がある方は、色の意味を調べてみるのもよいとは思います。


ちなみに、私が青を欲したのは久しぶりのことです。

ある時期、やはりこの色にとても惹かれていました。

その時の感覚と、今の感覚が似ているかと言われると、確かに似ている、と思います。


多くの語彙を持たない子どもは、絵を描き色を使うことで、感情を外に表すことができます。
それは大人でも同じことです。

誰にもうまく説明できない、その感情を、まずは自分が自分だけで大事に包み込むように、色を使って表現してみてください。

もしも、描きたいものが浮かばない時は、簡単な枠を描いて、その中を塗りつぶす「塗り絵」もお勧めです。


そして、他にお伝えしたかったことは、描き続けていると、知らず知らずのうちに、心の中の整理ができていたり、物語のようなものができてくる場合があるということです。

理屈で考えるのではなく、感情の深いところで、それらが進行している感覚があります。

こういったことが、癒しの時間のひとつとして、私が「絵を描くこと」をお勧めする理由です。


他にも、癒しの方法はいろいろありますね。
また、ご紹介できる時は、別のものを提案させていただくかもしれません。





子ども達が描きたい時は、どんどん絵を描いてよいと思います。

被災した子どもの、状況、年齢、個人の性格によって、いろいろな絵が出てくるかもしれませんが、それが例えば、明らかにストレスを感じているようなものでも、「感情を素直に出すことで、その感情と共存でき、乗り越えていく過程」だと思い、あまり心配しなくてよいと思います。
逆に、明るい絵を描いたことを誉めすぎると、明るい絵を描けば周囲が喜ぶんだ、と素直な感情を出せなくなるかもしれません。
「よい・わるい」というような、肯定・否定をせずに、一緒にその絵の世界を味わい共感してもらえると、子どもはほっとするかもしれません。



ひとつ、サイトをご紹介したいと思います。
長年、子どものアトリエを営み、色彩と心の関係について研究し、色に関するさまざまな事業を展開している「ハート&カラー」という会社があります。
スタッフの方々は、阪神・淡路大震災でも、現地の子ども達に、「絵を描く」という場を提供されました。子ども達は、表現や遊びの場に飢えていたかのように夢中で絵を描いたようです。

今回も、形は違いますが、東日本大震災のために尽力されています。

その中で、子ども達のために、心のケアに使える塗り絵をダウンロードできるサイトが用意されました。
スタッフの方の許可をいただきましたので、こちらに紹介させていただきます。

http://www.heart-color.com/archives/2011/03/post_100.html


塗り絵というと、子供用のキャラクターものの塗り絵か、少し難易度の高い大人の塗り絵などがありますが、この塗り絵なら、子どものみならず、大人でも気軽に使えると思います。

もし、環境が整っているようでしたら、ぜひダウンロードして、子どもさんにも、そして大人の方も使ってみてください。


また、「ハート&カラー」から普段発売されているセラピー用塗り絵は、私のカウンセリングでも、機会があれば利用しています。
画材とともに準備しており、カウンセリングの最中に作業し、最後にカウンセラーとともに語り合うというケアセッションもできます。
ご希望があれば、ぜひお声をかけてください。
posted by サトウマリコ at 22:26| Comment(0) | 震災 心のケア
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