2010年12月10日

カウンセリングの効果

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最近は国でも地方公共団体でも事業をするには「費用対効果」というものを考えながら、新事業を始めたり、廃止したりすることが定着してきたようです。
いくら、「やりたいから!」「いいものだから!」といっても、「無い袖は振れない」といわれると返す言葉がありません。
(これは、家庭内でもいえますね……)

一般企業では、儲けがなければ意味がないというのは当然だと思うのですが、公共の事業の場合、費用がどれだけかかるかは事務的に計算できるとして、「効果」はどうやって説明するのが妥当なのでしょう。
あくまでも数字対数字の世界なので、例えば、それだけの費用をかけて、「何人の人が・どうなったのか」という効果を示さなければならないと思うのです。が、「何人の人が」までは、どうにか統計をとることができても「どうなったのか」の部分というのは、図りしれない気がするのです。

どの分野でもそれは共通していると思います。

『道路がひとつ完成した。莫大なお金がかかった。
その道路を使う人は便利になった。でも、一日に通る車は10台です』(極端な例です)


そうなると、誰が見ても、費用に見合った効果ではないだろう、と感じるかもしれません。
でも、都会の人はすいすいいろんな道路を使っているのに比べて、例えば、地方で山の中をくねくねと急カーブをいくつも超えて、しかも冬場は凍結していたら、移動するのが本当にきついですし、危険で諦めざるを得ないということもある。だけど、まっすぐで凍らない道路がもし通ったら、その道を通って、諦めていた多くのことができるようになるかもしれません。

自分の病状にあった病院に行ける。仕事の選択肢が広がる。習い事に行ける。趣味を楽しめる。そういったことは、人としてものすごくプラスの財産になって、その財産を身につけた人が、将来、何かをしたことで、大きなことが動くかもしれません。いきなり大きなことではなくても、ちょっとずつ連鎖が広がっていくかもしれません。結果として、経済に影響もでるかもしれませんね。何が起こるかわからない。
だけど、そのようなことは、「効果」として数値化することはされないでしょうね。

さらに教育や福祉、あるいは人を育てるなどソフトの分野では、もしかすると、事業仕分けのような場面では、かなり苦しい思いをするかもしれません。
効果を説明するのが難しいのです。

例えば、今、子供達を自然の中で何泊何日でキャンプさせる、という事業があったとします。コストは計算できると思います。
では効果は?
資料として出せるのは、参加人数とせいぜい参加した子供達の感想くらいではないでしょうか。
そのキャンプで得たものの効果をどうやって説明できるでしょう。



いつものように前置きから書いたら、やはり長くなりました。

実はカウンセリングもそうなのです。

「カウンセリングの効果は?」と訊かれて、わかりやすいのは、「こういう症状がなくなりました」ということかもしれません。
また、カウンセリングの講義の中で語られる、一般的なカウンセリングの効果、という説明のしかたはできます。
でも、その人にとって、どんな効果があったのか? というのは、結局意識するにしろ、しないにしろ、その人にしかわからないと思うのです。

カウンセラーとしては、カウンセリングという時間は共有できるけれど、その時間が過ぎた時に、その時間が、その人に何をもたらしたか、ということは、実際のところ知るのは難しいのです。時には知る機会もありますが、受けた人以上にはわからないと思います。
仮に、他人に納得できるような説明ができるとしても、「守秘義務」を超えて、それをすることはできません。


その点で、今朝、興味深い番組を見ました。

NHKの朝の情報番組に、ゲストとして俳優の堺雅人さんが出ていたのです。
話題が高校生の頃のことになった時。

堺さんは、よくスクールカウンセラーさんとお話していたそうです。

「堺さん、悩んでいたんですか?」と司会の方が尋ねると、
「悩んでいたというより、悩んでいるというふりをしながら、その先生(カウンセラーさん)と話したかっただけかもしれません」と答えていました。

うーーん、カウンセラーの私としては、興味深い、というか、言葉にしにくい複雑な心境です。

ちなみに、カウンセラーの方は男性だそうで、その人柄に魅力を感じていたとのこと。いろいろなことを自分から引き出してくれる存在、と感じていたようです。
私は家事をしながらの「ながら見」だったので、途中の流れがあいまいなのですが、テレビ局がそのカウンセラーさんに連絡をとったようで、当時の堺さんがどんな高校生だったのか、コメントがありました。曰く、「自分で悩みの問いを作って、自分で答えてしまうような」タイプだったようです。

それを受けて堺さん。
「その先生から教わったことが今でも生きています。先生は、哲学的なことをおっしゃって、『問い』というのは、自分でそれを見つけた時、すでにかなりの部分を進んでいるんだよ、というようなことを。俳優の仕事でも、同じようなことがいえると思っています。問いが出てきた時点で、その役をやるのに、すでに大分進んでこられているのかなと」(注:私の記憶ですので、大意と思ってください)

ゲストとして、役柄を持たずに話す堺さんは非常に頭の回転が速く、しかもそれを瞬時に言葉で表現できる方のような印象を受けました。
そして、上のやりとりや他の話を通して思ったことは、自分自身に自覚的である、ということです。
自分というものが、何をしているのか、わかっている。心理学の言葉でいうと「自己一致」できているのです。

もともとの素質なのかもしれませんが、おそらくカウンセラーさんと多くの時間を共にしたことも、その一端を担っているのではないか、と思いました。
約20年前のスクールカウンセラーさんの言葉が彼の中で生きているわけです。時の長さを感じさせないほど、生き生きと。当然、そこで過ごした時間は、今の堺さんの中で、何かしらのポジションを持ち続けているのではないでしょうか。

そして、「その」堺さんの活躍を見て、励みにされたり影響を受けている人の数は、数え切れないほどいらっしゃるのでしょう。(もちろん経済活動にも影響は出ていると思います)

こういった場で、本人から明かされて初めて、カウンセリングがその人にどのような影響(効果)を与えたかがわかるわけですが、きっとカウンセリングを受けた方、一人ひとりに物語があるのだと思います。
(カウンセラーの力不足、若しくは、相性の問題、カウンセリングを受けた時の状態によっては、残念ながら、記憶に残らないカウンセリング、もしくは効果のないと感じられるカウンセリングもあると思います)



と、いうような「効果」を、前半で述べた「費用対効果」の世界で説明するのは、とても難しいのです。
国の事業仕分けで、あるカウンセリング関連の事業の「効果」を全く理解されなかった事例の議事録を読みました。理解もされなければ、説明もできていないところが、歯がゆいです。
本県の事業にもスクールカウンセラーの事業があります。これは現在、拡充の方向にあるようです。

何にしても、数字や効率だけでなく、本来の「効果」を示していけるといいのですが。

公共の事業に限らず、カウンセリングの効果を発揮できる場が増えるように、また一人でも多くの方に効果を感じていただけるように、自分としては研鑽を積むばかりです。
posted by サトウマリコ at 16:07| Comment(2) | カウンセリング
この記事へのコメント
「あさイチ」の堺雅人さん、少しだけみました。(^^)

私の仕事も数字で結果は示せません。
日本人は数字、ランキングをとても気にする。
そうでないことは行政も切り捨てることが多いですね。

「大切なことは目に見えない」星の王子様の中の言葉だったでしょうか。

師から教わったことが何十年もたってから「そうだったんだ!」とわかることもしょっちゅう。

スクールカウンセラーも教員と同じ時間常駐する体制になったらどんなにいいでしょう。
一般教員の負担も減りますよね。
いくら講習をうけても、今の現場では教員が生徒の話にじっくり耳を傾ける時間がありません。

会社など各勤務先にも産業カウンセラーが常駐してくれたら。
長い目でみたら、費用対効果は大きいと思うのだけど。

長い時間軸で政策を考えるのも、今までの政府は苦手でしたね。

私たちも、お上任せはやめて、何かしないと変わらないのかもしれません。

Posted by 大切なことは目に見えない at 2010年12月10日 22:01
>大切なことは目に見えない さん

「大切なことは目に見えない」
・・・素敵な言葉ですね。
ファンタジックな雰囲気だけれど、深く考えさせられます。そして、頷かされます。
目に見えない大切なこと・・・世の中には沢山あるでしょうね。そんなお仕事をしていらっしゃるのですね。

>師から教わったことが何十年もたってから「そうだったんだ!」とわかることもしょっちゅう

そうですよね。教育とは一生ものだと思います。
それにしても、その時はわからなかったはずなのに、大切な言葉だということだけは、ちゃんとわかっているから、何十年も記憶に残っているのでしょうね。
そういう教え方をできるのがプロだなあ、と思います。

先生方の多忙さも、数ある職業の中でも、かなり大変なほうではないかと思っています。現場の先生方もやりたいことと、やらなければならない「仕事」の間でジレンマを感じていらっしゃるのではないかと思います。
こういう現場の問題、少しずつでも改善できたらいいですよね。

>会社など各勤務先にも産業カウンセラーが常駐してくれたら。
長い目でみたら、費用対効果は大きいと思うのだけど。

そうそう、私もそう思います。使い捨てみたいにするのではなくですね、一人ひとりの経験値を大事にしていってほしいものです。

行政の問題は、無駄な予算を削減する、という姿勢がなければそれも困るでしょうし、痛し痒し。。
確かに、全てをお役所任せにしようという姿勢も考えなければならないと思いました。企業があって、行政があって、だけど「住民」自身ができることもあるはず。はっとさせられました。
Posted by サトウ at 2010年12月11日 23:04
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