2010年11月24日

本の紹介「家族の勝手でしょ!」

「家族の勝手でしょ!−写真274枚で見る食卓の喜劇―」
岩村暢子著 2010年2月20日 株式会社新潮社発行 
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仕事柄、心の不調と体の不調についての繋がりについてよく考えたり調べたりします。
また、心の不調について考えるとき、その方の「考え方」や固有の「経験」について主に心を配ります。

心の不調については、もうひとつの観点も重視しています。
それは、「食生活」です。
体の病気もそうですが、心の状態も実は食べ物と繋がっているという考え方があります。

自分が思春期だったころは、「イライラしやすい=カルシウム不足」などと言われると、そんな単純なものではない、と思ったものでした。
確かに要因はひとつではないと思いますが、今は、「セロトニン」や「ドーパミン」など、脳内の神経伝達物質が、気分の落ち込みや状態を左右する、という説がある程度浸透しています。

出来事によって、そういった物質のコントロールがうまくできない状態に陥ったのか、あるいは逆にコントロールがうまくできないから、遭遇した出来事に適応できないのか、つまり卵が先かひよこが先かまではわかりません。
ただ、一度そうなったからには、食物を摂ることによってそれらの物質が体内で作られる、ということに目を向ける必要がある、と考えます。

という理由から、栄養と気分、免疫などとの関わりについて関心が高く、一般書になりますが、いろいろな本を手にとってきました。
つい先日も、胃や腸のしくみと食生活についての本を読んだばかりでした。(あらためて、野菜をもっととらなければ、などと思ったりしました)
機会があり、そのすぐ後に読んだのが、タイトルの本です。

そのギャップが衝撃でした。
今まで、「このような食生活をすればよい」という理想を示唆する本ばかり読んできたわけですが、気がついてみると、普段「皆さん」がどんな食事をしているか、という本を手にする機会はなかったわけです。

かいつまんでこの本の中に出てくる「驚愕な」食卓を紹介すると…。

・一週間野菜がほとんどでてこない食卓
・スナック菓子やケーキを皿に持った朝食
・ご主人がいる時と不在の時に大きな違いのあるメニュー(定食のような食卓とカップラーメンとか)
・子供はコンビニで自由に選ばせたもの、母親はビールとつまみの昼食
・素うどんや素パスタなど具のない麺類
・各自の皿に取り分けることなく、魚ですら、一尾を家族全員でつつきあうスタイル
・一つの食卓を家族全員が時間差で使うシステム
・パソコンや携帯、その他のもので溢れ、食器を並べるスペースがちょっとしかないテーブル

などです。
これらは、写真つきで紹介されています。

また、この本に載せるために行っている(継続している)調査では、まず事前アンケートをとり、子供を持つ世帯の主婦に、食事づくりで気をつけていることなど細かく訊いています。
さらに、調査は一週間続き(前半と後半で差が顕著にあらわれるため、この設定にしているそうです)、終わった後に、事前調査とのギャップについて面接調査により訊ねています。

その言葉が、また衝撃を受けます。
例えば、「野菜を沢山とるように配慮している」主婦の食卓に、1週間ほとんど野菜がのらなかったことがわかり、それを指摘すると「栄養指導で、一週間で帳尻を合わせればいいと聞いたから、一週間に1度は出すようにしている。この週はたまたまのらなかっただけ」という答えが「あっけらかん」と戻ってくるようです。

それに類似したエピソードがてんこもり、の本でした。

この本の書評で、「昭和40年代以降に生まれた人は、料理をしない」といった論調で批判している方もいらっしゃいます。
確かにそうかもしれません。
私にも当てはまる部分が全くないとはいえません。
少なくとも、お出汁を最初からとることはしていません。

あとがきを読むと、この調査は「主婦」を対象としているが、この本で語られているさまざまな問題が主婦や女性にだけに起因すると考えているのではなく、主婦に焦点を当てることで問題が見えやすい、というねらいがあることが紹介されています。
写っているものに目を奪われず、その奥にある社会背景へと目を向けてほしい、と。

非常に考えさせられました。
中流世帯を調査したということですが、何割くらいがこのような食卓なのか?線引きが難しいようで、そのへんの数字は書かれていません。ですが、決して極端な例だけを引いたわけではないということです。
この本によると、主婦は、忙しく、疲れているそうです。「そんなこと(食事づくり)をしている暇はない」とも思っているようです。
それと、ご主人もそのことに異をとなえていない、という家庭が多くみられるようです。

私たちは、昔のような「食卓」を忘れてしまうくらい、一体何に、夢中になり、時間を奪われているのでしょうか。
「ネット」「子供の習い事」「その他のこと」……?
便利で早くて安いことを求め、ニーズに応えて産業が発達し、思わずそれを手にとってしまう。
食卓の変化は、個人の問題というよりも、そういう社会に住んでいれば当然のことかもしれません。

先日、用事と用事の合間に、ショッピングモールへ行きました。
駐車場にはあふれるほどの車。結構混んでいます。
軽い昼食をとるため、ファーストフードの店に囲まれたフードコートへ行くと、人でごった返していました。
時間帯は昼を過ぎていましたが、それでも他の店よりも、フードコートのほうが人が多いように感じました。
この本のことを思い出しながら、私も、目の前で20秒ほどで作られたうどんをすすったのでした。

社会規模の現象を総括するのは難しいのですが、まず手始めに私がしたことは、毎日の自分達の食卓をカメラに収めること。何かが見えてくるかもしれません。
posted by サトウマリコ at 11:42| Comment(7) |
この記事へのコメント
新聞で紹介されていて、気になった本。
私も栄養の知識はあるはずなのに、最近の朝・昼は菓子パンとみかん・りんごだったり。夕食は少し食事っぽくしますが、朝昼足りない分寝る前にヨーグルトを補充したり。乳製品はまだいい。夜遅く繊維質・油を摂ると眠りが浅くなって最悪。
今年度、週3日は夕食も一人で調理が面倒になりいい加減な食生活に。もろに体調に影響しました。
夜ネットする分早寝・早起きして、ちゃんと朝食べればよいのに。
料理研究家の辰巳良子さんは「3食まじめに作ると5・6時間かかる(プロで手早いのに)」と言ってました。
そこまでいかなくても、簡単でいいから自分で作ることを心がけたいです。
現代人は一見便利なことと時間を引き替えに健康をはじめいろんなことを失ってますよね。
便利さがストレスを生む矛盾。
スロー○○でみんなゆったり暮らせばいいのに。
スピード追求を一斉にやめない限り難しいですね。

Posted by 料理下手・料理本好き at 2010年11月24日 23:36
「辰巳芳子」さんが正しい漢字でした。訂正です。
Posted by 料理下手・料理本好き at 2010年11月24日 23:40
 家政科にいたので「食事」の問題はとても身近なものでした。
 貧しい食卓というのは、昔は経済的に貧しいという意味だったでしょうけど、今は精神的に貧しいという意味が多いように思います。
いいモデルを持てなかった親には子どもに手本を示すということはできないですね。
悪循環が繰り返されるのは悲劇です。

家族が一緒に食べられない環境では、主婦がしっかりと夕食を作ろうという気持ちになれないのはしかたないように感じます。
オーストラリアではパパたちも5時半には帰宅しました!
Posted by みきこ at 2010年11月25日 17:23
>料理下手・料理本好きさん

>現代人は一見便利なことと時間を引き替えに健康をはじめいろんなことを失ってますよね。
>便利さがストレスを生む矛盾。
>スロー○○でみんなゆったり暮らせばいいのに。
>スピード追求を一斉にやめない限り難しいですね。

この部分、共感・納得しました。
そう、「一見」便利になって、効率がよくなったはずなんですよね。インターネットとか、昔では考えられない情報入手の速さ。
それなのに(それだから?)、皆忙しくなって、「料理にかける時間」を惜しく感じるようになったのでしょうか。
だから、「一斉にやめなければ」なんですよね。

ついていかなくては、生きていけないと感じるような、ちょっと息苦しさもある世の中ですね。

体のもとになるものは、意識していかないと、おろそかになってしまうかもしれないですね。
私も、料理は下手ですがまずは手作りだけは心掛けたいと思いました。あと、野菜(笑)
Posted by サトウ at 2010年11月25日 21:08
>みきこさん

家政科ではご専門ですよね。
親子のつながり、という視点で考えても、食生活って本当に大事だなあ、と思います。
私も結婚して、食文化の違いにいい意味で驚き、影響を受けました。

本の中で、驚いたのは、料理をしない娘の家族のため(孫のため?)せっせと手料理を差し入れる祖母の存在です(別居なのに)。それが生きがいのようなところもあるのでしょうが、なんだか違和感を感じました。

>家族が一緒に食べられない環境では、主婦がしっかりと夕食を作ろうという気持ちになれないのはしかたないように感じます。

そうですよね…。正直、一人暮らしの時は、「作る気持ち」になった時だけちゃんと作る、今は、作る気にならなくても(一応)作る、この違いは大きいです。

パパが5時半に帰る! いいですね。日本もここから変えていきたいですよね。
Posted by サトウ at 2010年11月25日 21:10
自分自身が終結まで至るのに大きな決め手となったのは身体を作る材料に目を向けたことでした。
それによってお医者さんの指導のもと適切に減薬が進み、医療費が1年半前の半額になるほどでした。

ただし日本国内を見てみると、身体を作る材料が先であるということに気づかず、必要以上に医療に頼ったり、メディアなどで流れている運動器具などをついつい買いあさりるという現状なんですよね。

「脳内の神経伝達物質が、気分の落ち込みや状態を左右する」と佐藤先生がお書きになったことは理にかなった話であり、2010年8月に群馬大の研究チームが「脳内に豊富に存在する特定のたんぱく質がうつ病を抑制する働きを持つ可能性がある」と発表し、脳の伝達物資レベルに注目しての改善方法が注目されています。

たんぱく質というのは、筋肉・血液・皮膚・胃・酵素・髪の毛・神経伝達物質などが作られる人間の身体に不可欠な栄養素で、この不足が肥満や体調不良を起こす要因となったり、人間の思考力や判断力にまで影響が及ぶと言われています。

人間の身体の50%は水分、25%はタンパク質から形成されているそうです。

昨今、キレやすい若者、忍耐力のない大人、授業中に立ち歩きをする小学生、モンスターペアレンツ、凶悪犯罪など殺伐とした事件など悲しいニュースをよく耳にしますが、社会環境の変化による側面は大きいと思います。
ただ、こうした問題は食習慣の乱れと決して無関係ではなく、食べ物こそ私たちの身体だけでなく、思考力や判断能力といった心の面まで構築していることを「家族の勝手でしょ!」の紹介記事を読んで改めて考えました。

またカウンセリングというお仕事の重要性を考えさせられる内容でした。
Posted by Hakucho at 2010年12月02日 02:29
>Hakuchoさん

Hakuchoさんも「身体を作る材料」について、目を向けてこられたのですね。
そして、詳しく、いろいろなことを学んでいらっしゃるのですね。

栄養と身体の関係についてわかっていることは、本当に沢山あるのでしょうし、まだまだ研究途上のものも多くあるのだと思います。

たんぱく質のお話がありましたが、そのように身体の多くを形成するたんぱく質に加え、全体的な調整を上手にしていくために、多くの微量なビタミン類なども関係していると思いますし、また、血糖値と精神状態についての研究も目にしたことがあります。

皆さん、多かれ少なかれそういった知識を耳にしたことはあるのだと思いますが、それを実践するとなると、なかなか簡単なことではないような気がします。
そこが、社会環境による食生活への影響、ということになるのかと思います。

とはいうものの、努力次第で習慣を変えて実践できることもあると思うので、気づいたところから、できるところから…ですね。

Hakuchoさんの経験をふまえたお話から、あらためてそう感じました。
ありがとうございます。
Posted by サトウ at 2010年12月02日 19:44
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