2010年05月07日

All we need is Love

本の紹介です。

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All we need is Love
著者 清水尚
発行所講談社
2010年2月18日第1刷発行

この本は写真集です。

掲載されているのは、子供がいるアメリカの家族の日常の場面。
ですが、彼らはアメリカでは(アメリカでさえ)マイノリティだそうです。
それは、親が正式に、あるいは事実上結婚を遂げたGLBT(ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスセクシャル)のカップルであること、そして生活を共にする中で、自然な流れで「子供」を受入れたいと願い、養子、代理母、精子提供といった様々な過程を経て子供を迎え、「家族」となった人たちだからです。

少し前の記事「多様な価値観のひずみ」という文章の中で私はこう書きました。


***
今、大人の私は、ランドセルにしても、絵画にしても、これらのことについて、「へぇ!」と関心することができます。

でも、もし子供の頃に、図画の時間、みんなで外で花の写生をしていて、隣の子の絵を覗き込んだときに、実際とはかけ離れた色の花が画面いっぱいに広がっていたらどう思うだろう、と考えてみました。

口に出すかどうかは別として、心の声は多分「それは違う!」とか「それはおかしいよ」かもしれません。あるいは、「○○ちゃんってちょっと変…」と思ってしまうかもしれません。

それは、私の中に、「写生とは見たとおり描くもの」とか「花は暖色系である」などという思い込みがあるからだと思います。
***


大人になった私は、沢山の価値観を知り、隣の人の価値観を知って驚くことは少なくなりました。
だからこそ、カウンセリングをしている中で、利用者の方が、何かの「思い込み」に縛られて、身動きが取れなくなっている姿を客観的に捉えることも、少なからずできるのだと思います。

けれど、この本のレビューを見た時、そこにはまだ、私が「慣れていない」世界があるように思いました。
上の引用の中で言えば、子供の頃に、現実とは違う色で花を描いている友達の画用紙を覗き込んだ時のような感覚がするのではないか、と感じたのです。

私は、そこに、自分の知らないどのような世界が広がっているのか知りたいと思い、この本を買ってみました。
そして、写真を眺めれば、またひとつ新しい価値観を知ることができるだろう、感覚としてつかめるだろう、と思ったのです。

正直にいうと、それは思ったほど、すんなりとできることではありませんでした。

言葉で「多様な価値観」を尊重しよう、というような伝え方をする私でも、視覚的に違和感を感じてしまうのです。

それは、今まで見たことがない姿だったから。
男性のカップルに挟まれる子供。
女性のカップルと一緒に食事を取る子供。
逆に言うと、子供を挟んで、ぎゅーっと愛情を込めて抱きしめる、同性のカップル。
そして、意図してだと思いますが、子供は画面に入れず、純粋にカップルがハグしたりしている写真も必ず一家族に一枚は入っています。

私は、「視覚的に見慣れていない」この世界をもっと当たり前のように感じたくて、何日も傍らにこの本を置いておき、繰り返し写真集を眺めました。
そうすることで、慣れて普通のことに感じるかもしれない、と考えたからです。

しかし、何度ページをめくっても、立派な大人の男性たちが、くっつきあっている姿に「慣れる」ということはできませんでした。

そこで、私は、じーっとページを見つめました。
中でも一番違和感を感じたページ、男性のカップルが、よりそって、一人の男性は恥ずかしそうに顔を赤らめている、という写真です。
なぜ、違和感を感じるのだろう? そんなことを考えながらずっと見ていると、あることに気がつきました。

同性同士がくっついていることは見慣れないことだけれど、実はどのページにも、馴染みがある部分があったのです。

それは、目です。
お互いを慈しみ合うような瞳。
その部分だけを見ていると、なんの違和感もなく、すーっとここに出てくる家族の会話が聞こえてくるような感じがしてきました。

虐待の事件が増えていく中で、このような血の繋がりのない親子のほうが、純粋な絆で結ばれている場合もあるのではないか? そう考える方もいるかもしれません。
でも、私は、ここに切り取られた場面は確かに幸せそうに見えるけれど、きっと<血が繋がった>家族と<同じように>、時には喧嘩をしたり、行き違いがあったりと様々な葛藤もあるのではないか、あるいは将来そんな時が来るのではないか、そんな気がしました。

つまり、この写真集を眺める時に違和感が減ると共に、今度は当たり前の家族のように見えてきたのです。

実際には当事者でない私にはわからないことが沢山あるし、当事者であっても、一つひとつの家族には個別の物語があるのだと思います。


多分、私にはまだまだ「視覚的に見慣れていない世界」が沢山あると思います。
街を歩いているだけでは、出会うことの少ない人、職場、集団……沢山あると思います。
でも、もしかすると人間というのは、嬉しい、悲しい、楽しい、つらい……、いろんな感情は共通しているものだから、瞳を見れば、それまでに出会ったことのある誰かに似ている、と思えるのかもしれません。

いずれにしても、この本は、「All we need is Love」というタイトルを裏切らない愛情に満ちた眼差しが溢れている本です。
忘れていた何かを思い出されてくれるような気がしました。


見た目や形にとらわれず、本質的なものを見る目を養えるようになりたいものです。
posted by サトウマリコ at 15:39| Comment(0) |
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