2006年11月01日

ナゲキバト

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本の紹介ですかわいい

「ナゲキバト」 ラリー・バークダル著 片岡しのぶ訳/あすなろ書房

私にはあまり祖父母との想い出がありません。
子供の頃、父の田舎に遊びに行って、緑や土の匂い、川の水の感触、ゆったりとした時間の流れ…そういったものは味わえました。今思うとそれは本当に幸せな時間でした。でも長期休みに行くのでは、自分は祖父母から見ると大勢集まった孫のうちの一人。優しい笑顔は思い出せても、どんなことを話したのかはよく覚えていません。

この本の主人公、ハニバルは、9歳の時に両親を交通事故で亡くし、父方の祖父の家に引き取られます。そこでの「おじいちゃんとの二人暮らし」は、傷ついた心を癒すだけでなく、生きるために大事なことをハニバルに教えてくれます。

この物語は、大人になったハニバルの視点から、子供の頃の濃密なある時期を思い出の記として描かれています。
たまにしか祖父母と接することがなかった私は、一緒に暮らす中での二人の触れ合いを新鮮な気持ちで眺め、一気に読んでしまいました。

例えば、ハニバルは友達の影響を受けて、「嘘」をつくことを覚えてしまいます。そんな時、祖父は嘘はいけないということをハニバルに理解させるために、直接的な言葉でしかるのではなく、ハニバルに嘘をつき続かせながら、一呼吸置いて結局なぜ嘘がいけないのかということを覚えさせます。

長年の経験があるからこそ持てる、ゆとりとゆるぎない信念が、「何が大事なのか」、「なぜ大事なのか」ということを少年の心にしみこむように教えていきます。

表題となっているナゲキバトは、狩にあこがれるハニバルが撃ってしまった鳥のことです。撃ったあとで、二羽のひなが近くの巣で親鳥を待っていることに気づき、ハニバルは愕然とするのです。
そして、ハニバルは祖父から、片親だけで二羽を育てるのは無理だから、一羽を自分の手で殺すように命じられ、呆然とします。一体どちらを選べばよいのかと……。

この体験を通して祖父がハニバルに伝えたかったことは、本全体を通して貫かれている人間の存在を超えた大きな愛情というものに通じていくのではないかと思います。

この話の中では、祖父と孫という関係の中で語られていますが、どういう形にしても、人が生きるために大事なこと…脈々と人々が受け継いできたものを伝えてもらう場を、特に幼い頃に体験することは、本当に大事なことだと思いました。きっと、大人になって必要な時が来たら、その時の体験がふっと甦ってくるのではないでしょうか。それがあるかないかが、人生を大きく左右するかもしれません。


本書は児童書ですが、大人にも「心を強く持てる、励まされる」と人気がある本で、初版から十年経ち、新装版がこの春出版されました。

おじいちゃんの語り口を味わっていただくために、私が気になった一節をご紹介します。

「祖父は、『わしら人間は、苦しんでいる者が出す音の量で苦しみの量をはかるんだね。もしも魚が痛がって泣き叫ぶとしたら、釣りをする人間の数はずっとへるだろう』と言った。
 チャーリーは釣り針にかかったマスのようなものだった。だまっていたから、彼がどれほど寂しい思いをしているか、だれも知らなかった。」

随所に、今現在の自分の生活や、日々のニュースを見て感じることに通じる「おじいちゃんの言葉」がちりばめられています。
なんだか懐かしくほっとするような、大事なことを思い出せてくれるような読み応えのある一冊でした本




posted by サトウマリコ at 11:30| Comment(0) |
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